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ゲームやゲームの改造についての雑記・備忘録。Twitter:@dark_learner

ローグライクの興亡

 

この記事はRoguelike Advent Calendar 2021 12日目の記事です。

 

 

 

ローグライク (Roguelike)、それは偉大なる祖Rogueを起源とするコンピュータRPGである。

アクション・ストラテジー要素の強いゲームやローグライト(私はあまりこの表現好きじゃないけど)と呼ばれる分類もあるらしいが、少なくともここではRPGのみを取り扱う。

1980年から続いている由緒正しいゲームであり、その血脈は形を変え派生しながら延々と続いている。

さて、ローグライク好きなら一度はこう思ったことはないだろうか。

「なんでこんな素晴らしいゲームが一般に流行らないのだろうか」と。

 

 

どこまでこの認識は本当か、まずは人気を数字で見てみる。

参考:

http://twist.jpn.org/sfcsiren/index.php?%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E6%9C%AC%E6%95%B0

ミリオンセラーのゲームソフト一覧 - Wikipedia

あとその他もろもろ。

 

 

PCの照明器にローグ (1980)そのものがどれだけ流行ったかは良く分からない。

ただ現在に至るまで多数のバリアントが作られたので、熱心なフォロワーが多数いたのだろう。

いわゆる家庭用ゲームに進出したのはメガドライブの死の迷宮 (1990)が初めてらしい。

 

家庭用ローグライクRPG系の売り上げ本数トップは、ポケモン時・闇の探検隊(2007)が155万本、次点のチョコボ不思議なダンジョン(1997)が110万本、比較としてポケモンダイアモンド・パール(2006)が582万本。

初代SFCシレン(1995)が23万本程、比較としてSFCドラクエ5(1992)が280万本。

加えて世界的RPGの累計に見るとポケモン赤・青・緑(1996)とスカイリム(2011)とディアブロ3(2012)が3000万本程。

ゲームハード別に見ると上位10位においてローグライクがランクインしているのはGBAにおけるポケモン赤の救助隊(2005)のみ。

 

最近の売り上げを上げる。

Steamゲームとしては売上台数が良く分からないがToME4(2012)とかは売れているようだ、ただSteamはRPG以外も纏めてあるのでFTL(2012)やNotia(2020)などと同ジャンルにされている。

任天堂の2020年決算報告において、ポケモン救助隊DXは世界で126万本(国内36万本)、比較としてポケモンソード・シールドが1737万。

オメガラビリンス(2015)は3万本、オメガラビリンスライフ(2020)は累計販売本数が5万本を発表、比較としてUndertale(2017)は累計100万本以上を記録。

 

Google Appにおけるソシャゲで見るとelona mobile(2021)が11,029レビューでRPG内の順位は164位(2021/11/13)

後、カタクリズムDDA(2013)が1,492レビュー(2021/11/13)。

 

売上もいいが、検索数でも見てみよう。

グーグルで検索すると「フリー ゲーム」は約 313,000,000 件、「フリー ローグライク」は約 2,310,000 件、比較として「フリー RPG」は24,600,000 件

ニコニコ動画で検索するとフリーゲームで最大200万再生、ローグライクシレンやElona(2007)で最大50万再生程、

 

 

 

 

データをざっと見る感じ、定説通り「マイナーだけど根強い人気がある」という認識で間違いないようだ。

売上で分類するならば、ローグの登場の1980年、家庭用ローグライクの登場&スーパーファミコンの登場である1990年、ニンテンドーDS発売とSteamのリリースの2003年、この辺りは分けるべきだろう。

特にNDSは社会現象(ゲームのカジュアル化とマジコン問題)として、Steamは海賊版に対する回答の一つとして大きな影響を与えており、この付近から2021年現在に至るまでゲーム産業は大きな成長を続けている。

しかしローグライクはゲームの主流とは言い難い。

なんでだろうね。

 

 

ではローグライクの主な特徴と。

そのことがプレイヤーにどう影響を与えるかというかを考えていこう。

ローグの血を強く受け継ぐもの程これらの影響は大きくなるはずで。

それが売上や人気に繋がる、かもしれない。

 

失敗する理由なら誰だって好きに語れるし。

作る人間が成功する理由を知る必要もないしね。

 

 

0.コンピュータのボタンを押す遊びである

コンピュータゲームにおける大前提その一。

押しボタンやキーボードは第二次世界大戦後の発明であるが、驚く程社会に広まっている。

幼児向けの知育玩具や実際の研究を見る限り、どうも我々人間はスイッチを見ると押したくなるらしい。

つまり、「スイッチを押した結果、その人に望ましい結果が現れる」ことがコンピュータゲームの本質であるとされる。

スイッチを押すだけで世界が変わる、なんて素晴らしきことか。

 

 

0.コミュニケーション手段である

コンピュータゲームにおける大前提その二。

ゲームは一人でも遊べるが、どこかしらか伝わってくる必要は必ずあるという話。

あなた自身もローグライクを自分一人で知ったわけではないだろう。

 

初代ポケモンは例を見ない程の大ヒットを起こした。

その秘訣は当時としては画期的な通信交換にあったとされる。

これらは友人間のコミュニケーション手段として大きな役割を果たしていた。

似たような例としてはD&Dのようなテーブルトーク、そしてMtG等のカードゲームにも言える話だろう。

ゲームとコミュニケーションの関係は決して無視できないものと考えている。

 

 

(参考文献)0.についてや全体についてもっと見たい人はこちら:

www.amazon.co.jp

 

1.ターン制のRPGである

 

RPGの概念はTRPのD&Dが由来とされる。

RPGのターン制もここから来たものだろう。

同時にサイコロやダイスを表記する文化も、古きを重視するローグライクらしい。

 

ESAによると2014年でRPGの売り上げは全体の9.5%、トップはアクションゲームで26.2%だとか。

近年のRPGそのものが売上の10%程度なのは...ユーザーの傾向か。

与えられた役割を演じるより、アクションしたりパズルを解いたりするのが楽しいという人は多いのだろう。

RPGであることよりアクションやパズル方向に舵を切ったローグライクが売れても、まあそりゃそうだろうね。

 

 

2.膨大なプレイ数に耐え得る

初期のゲーム全般の傾向として言えることだが初期のコンピュータは容量やメモリ等の性能が不足していた。

そのため一本のゲームで長く繰り返し遊んでもらうことを想定された。

 

おまけに買う側としてもゲームは高価であり、さらに買ってみるまでその内容も不明であることが多かった。

(当然主な情報源はテレビや雑誌、そして知人からの口コミである。当然インターネットも未発達であり、インターネットも現在進行形で平然と嘘の情報に溢れかえっていることも留意したい)。

そうならば皆自然と評判の良いゲームを求めるのは想像に難くない。

 

...評判と質が全く比例しないことは、どれだけの人間が気づいていたのだろうか。

前評判による影響頼りで売り逃げされた粗悪なキャラゲーは数えきれない程である。

流石に次回作の売上には響いただろうが、「客は情報を食っている」と評したラーメンハゲは正しいのだろう。

 

キャラゲーは粗悪でもいいが(良くない)、この点ローグライクは粗悪なゲームに向いていなかった。

何故なら死んだローグライクは死んだからだ。

恐らく、質が高いという特徴がかえって悪循環を招いているのだろう。

少ない配を確保する為にも質を高めなくてはならず、そうでないものは虚空へと忘れられていった...

 

 

 

3.死のペナルティが重大であり、かつ不正に厳しい文化である

ゲームオーバー=キャラの死であり、後はスコアとプレイヤーの記憶だけが残る、バックアップを使用したスコアは認めらない。

変愚蛮怒(2000)における*気をつける*などの内輪ネタはその代表例だろう。

 

この辺りについては集団における規範の役割を果たしていると思われる。

縛りがない集団はその評判と信用を落とし、最終的に持続可能でなくなる。

ゲームにとっても、その辺りは馬鹿にできないのだろう。

 

さて、ゲーム業界はそこら辺をどう考えているのか。

ゲーム不正についての考えは、近年の動向として三つに分かれているようだ。

 

一つはクイックセーブを取り入れるようにルールを軽くする方向。

クイックセーブはパソファミ(1996)等のエミュレータ・TAS等の改造ツールの頃からあったにもあったが。

ミニファミコン(2018)になってようやく公式側にも搭載されてきたようだ。

これはレトロゲー系の元々ルールが厳しかったゲームに良く見られる。

 

もう一つはルールは厳しくしつつも死を軽くする方向。

この手のゲーム例はPUBG等のバトロワ物が挙げられる。

このジャンルはワンゲームにかける時間が極めて短いのが特徴である。

 

あるいはカードゲームやソシャゲのようにルールも失敗も重い方向。

御存知の通り、不正もできない・課金に失敗してつぎ込んだ石は帰ってこないと極めて制約は大きい。

しかしかなりボロイ商売らしく、

遊戯王OCGも原作者がMtGを元ネタに一晩かけて作り上げたゲームをコンマイは割と適当に作ったが、それでも紙幣のように売れまくったという。

このジャンルは妙にローグライカーとの親和性も高い。

 

正直ソシャゲがある限りローグライクの流行は無理なような気もする。

 

 

4.プレイヤーに対する要求が大きい

これはコンピュータは限られた人間にしか使いこなせない事に関するのだろう。

初期のコンピュータは一部の大学の中という物好きな人間が触るものであり、コンピュータゲームで遊ぶにはその知識が大前提にある。

その中で、わざわざ全部説明しなくとも彼らの中で十分に伝わる情報は幾らでもあることだろう。

インターネット空間にいる時はあまり感じないかもしれないが、世の中にはキーボードも使えない人も多い。

果たして、そんな人たちにPCで遊ぶという発想が出てくるのだろうか?

 

実際問題コンピュータゲーム全体の歴史としては、ゲームのカジュアル化が推し進められていた事は極めて重要だった。

彼等はゲーセンなどにつきまとっていた暴力や陰湿なイメージを拭うことに必死になっていた。

その結果は東京オリンピック(2021)のBGMにも表れたようだった。

 

ローグライクの中で特に人気を博したポケダンチョコボも、レベルのロストの概念ははシステムの段階でやり込みの域を出ない。

デスペナルティこそあるものの、レベルという点でキャラクターの連続性は保持されているの。

この二作が人気を博したのも、単にスピンオフ作品だからという意味でもないように見える。

 

ちなみにプレイヤーへの多大な要求を求めながらも大成功した例としてデモンズソウル系が挙げられるんだとか。

私も詳しく調べている訳ではないが、プレイヤーに対して快感を高めるためのデザインが徹底的に為されているようだ。

例え死にゲーであろうと結局の所、ボタンを押す行為である事には変わりがないのだろう。

 

 

5.食料システムの存在

ローグライクゲームで良く見られる行為である「稼ぎ」に関することである。

ローグライクは浅くて楽な階でレベリングすると極端に難易度が下がってしまう。

そのため何かしらで稼ぎを抑える必要があった。

故に定期的に食料を補給しないと餓死してしまうシステムが導入されたのだろう。

 

とはいえ、この食料システムは一般において不評なようだ。

RPGに食料があっても、せいぜいHP回復アイテムぐらいの役割である。

補給という概念は個人的に大変興味深いものだが、太平洋の嵐などを見るにあまり面白いものでもないのだろう。

 

 

6.無料である

起源であるローグからして製作者の善意による余興である。

無料というものには抗い難い魅力があるらしく、善意で配布された様々なデータが開発されてそれらが歓迎され。

そして、その多くの制作物が現在進行形で消えていっている。

 

善意のシステムが続かない要因とは何だろう。

色々理由はあるだろうが、簡潔に表すならば「愛は有限だから」だろうか。

良いものを作り続けるのに、善意は理由として弱いのだった。

 

基本無料の商業作品はこの点において順応しようとした結果ととれる。

当然、無料を維持するために何かしらの裏は用意されているのであって。

プレイヤーにとっても基本無料を謡うシステムは全然無料で済まされないのだが...

開発になぜそんなことするのかと聞いても、仕事だからとしか答えれないだろうし。

 

しかし、ここでひとつ気になることとしては。

ローグライクフリーゲームが多いらしいということが噂されている。

本数で見ればそんなことはないだろうが、変愚蛮怒は20年も開発が続いている。

...ローグライク住人の善性故だろうか?

 

 

以上を纏めるとゲーマーの母数を増やすした以上、大多数を許容しないゲームはまー埋もれるよねって話。

コンピュータの最初期のように、コンピュータゲームが極めて限られて人だけの遊びであるという前提が成り立つならば。

その時はまた、ローグライクもまた流行することがあるのかもしれない。

 

 

 

明日はRoguelike Advent Calendar 2021の13日目、radinms氏で「DCSSの昔を振り返る」の予定です。